空は雲ひとつなく晴れ渡っていた。
どこへでも行けそうな、そんな空がどこまでも
広がっていた。
澄み渡った空気が肺を占領しては
清々しい気持ちにさせてくれる。
そんな時
ふと、空を見ながら思うことがある。
この空を、あの人も見ているのだろうかと。
ただ、思うだけ。
ただ、青いだけ。
届きもしないことは分かっている。
思ったことが「罪」でも「罰」でもない。
頭上に広がった空が
ただ、思いを呼び起しただけのこと。
胸のポケットから煙草を取り出した。
火を点けてみる。
…少し笑った。
そして、すぐに切なくなった。
キスの味がした。
そんなハズはないのに。
だから、すぐに切なくなった。
あの人と交わしたキスの味がした。
微笑の後に、切ない空気が肺を占領した。
吐き出したら、その味は消えていった。
また、笑った。
今度は、長く。
空は雲ひとつなく晴れ渡っていて
青いキャンバスに白い絵の具で絵を描き始める前に
あの人の笑顔を思い出した。
飛行機雲の様にいつしか消えてしまって
その記憶さえ、思い出せなくなってしまうけど
雲ひとつない空を暫く、眺めていた。
雲ひとつない空を。
